2014年6月29日日曜日

モーム『アシェンデン 英国情報部員のファイル』

今年(2014年)は第一次世界大戦勃発(1914年)からちょうど100年の年、ということに気がついたのはサマセット・モームの『アシェンデン 英国情報部員のファイル』を読んでいたときです。モームが情報部員、英国スパイであったことはどこかで覚えていたものの、画家ゴーギャンの人生を描いた『月と六ペンス』や『人間の絆』など、国民作家という印象が強くて、スパイのイメージからは遠いものでした。でもこの『アシェンデン』を読んで納得がいきます。スパイ活動は人間観察のたまものであり、モームはそこに飛びぬけた才能を持っていた。

内容は、さまざまな国・土地を舞台にした諜報活動の短編を集めた話です。読み進めていくと、モームがいかに人間観察を楽しんでいたかに引き込まれます。第一次世界大戦の主軸(対ドイツ)はもちろんのこと、その舞台を取り巻いていた動乱―大英帝国からのインド独立運動やロシア革命―にかかわっていたのは、具体的な一人ひとりの人間であることがよくわかります。

人間の複雑性への追求、客観的ながらも、実に追い詰めていくアシェンデン。

読後なぜか元気になる本です。

平日谷川岳

昨年(2013年)6月初旬に谷川岳に行った時の話。

上毛高原駅からの始発のバスには友人と私以外誰もおらず、巨大なロープウェー乗り場もお土産売り場と係りの人以外観光客の姿を見かけず、たしかに平日の空いているときを狙ってきたもののあまりの閑散さに不思議なおそれをおぼえました。朝から売店に用意されていた玉こんにゃくはあきらかに煮詰まっただろう。。

ロープウェー終着(1,319m)から山頂のトマの耳(1,963m)までの天神尾根往復では、結局認識したのは3組くらいです。肩の小屋直下は雪が残っていたものの、ロープも張られていたので問題はなし。もやの中のブナ林歩きから始まり、小さいながら色の鮮やかな高山植物たちに見ほれつつ、ゆるゆると上がって降りてきました。

8月11日が「山の日」として制定されるようですが、あの閑散としていた、延々と続くロープウェー乗り場のことが思い出されます。混雑時は長蛇の列になり、始発と帰りのバスは通勤電車並みの混雑になるのだろうか。。。 登山ブームは決して悪いことではないとは思うけれど、もう少し山へのストレスが分散するといいなとは思います。以前、山雑誌で見かけて苦笑させられた「雪が降ったら会社を休んで山に行こう」は難しいにしても。


谷川岳 2013