2014年2月27日木曜日

田島征三『ふきまんぶく』

ふきまんぶくのふきちゃんが表紙の絵本、田島征三『ふきまんぶく』の初版は1973年で、もう40年前の絵本です。扉のことばに、絵本の舞台になっている東京都西多摩郡日の出村ではふきのとうのことを「ふきまんぶく」と呼んでいる、とあります。絵本は、ふきのとうと小さな女の子の幻想的な話で、これは何か土地の民話の土台があるのではないかと少し思います。この話は他の植物では思いつかない、ふきのとうでなければちょっと成り立たない話です。

田島征三さんの講演会に行ったのはもう10年前になります。小さな会議室のような部屋で、絵本創作と日々の暮らしの話を聞きました。日の出町の一般廃棄物最終処分場建設反対運動を経てもう日の出から移住した後で、体調もすぐれないようでしたが、まさに絵本の土の生命力にあふれておられました。前列に座っている子どもたちに向かって、真剣な表情で「トトロっていうのは本当にいるんだよ」と話をしていたのを強く印象に残っています。ああ、いい大人だ、と思いました。

「切り倒されていく木々の間を、小動物たちがぴょんぴょん飛び回っているのが見えるんです。」と万感こめて話をしていました。
 自然保護運動というのは抽象的な数字や理論よりまさにこういった、見てしまった、経験が土台になっている、と感じます。








2014年2月23日日曜日

ふきのとうとDNA

梅の香りがふっとだたよう季節になりました。黒い荒い肌の木に散りばめられた白い梅の花は青い空によく映えます。
春、春、と連呼されるのに反してもう少し丸まって冬に閉じこもっていたいという頭を自然に持ち上げさせてくれるのが梅の香り。

雪解けのころに山あいを旅をするのが、気がつけば毎年の習慣のようになっている。街からぽんとたどりついてふらふらと歩きだしてから、初めて見つけたふきのとうで何かがぱっと破裂するように喜びが広がれば、あちこちにあるふきのとうが目に入ってくる。

ふきのとうに対する喜び、それは苦味や美味を瞬間に思い出しているのだけれど、その感情をいま見つめてみるとちょっと不思議な感じがします。好きな食べ物を単純に喜ぶというより、もっと根源的なDNAにすりこまれた喜びというか。いつごろからふきのとうが食べられていたのかは知らないけれど、昔の人が迎えた春の喜びにふと思いをはせることができる。五感が今よりももっと豊かであったであろうころの話。



かたくりの花