2013年8月31日土曜日

フィリパ・ピアス『真夜中のパーティー』

小学生のころの缶けり遊びの話。
神社の敷地内で、オニの子がひとり空き缶を踏んづけてまわりの様子をうかがっている。隠れている誰かの姿を見つけて名前を叫んで缶を踏めばその名の子はつかまるし、誰かがオニの隙を見て缶を蹴ればもう一度ゲームはやり直し、捕虜は解放されオニはオニのままだ。私はお堂の木枠に隠れ、オニの様子を見ながら息をひそめて缶を蹴りに飛び出すタイミングを計っている・・・その先、どうしたのか、私は名前を呼ばれてつかまったのか、見事缶を蹴り飛ばしたのか・・・記憶はないものの、そのときお堂の下で飛び出す瞬間を待っていた緊張感は覚えています。

子どもの視線で見える世界や心象について描いた児童文学作品は大人にとっても本当におすすめで、フィリパ・ピアスの『真夜中のパーティー』はイギリスの田舎を舞台にした、どこにでもいそうな子どもたちを主人公にした短編集です。

がらくたばかり集めている嫌われ者のお隣さんの話、夜中に目が覚めてしまって台所に行った話、都会に住むいとこが遊びに来て帰る話、体の不自由なおじいちゃんと無口な孫の話などなど、かいつまんで書くと平凡な話になってしまいますが、平凡な話の中にも小さなドラマがおきています。小さなドラマが人にとっていかに核になっているか、淡々した文体の中で子どもとかつて子どもだった大人の読者は一緒に生きることができる作品です。