2012年7月22日日曜日

植村直己『青春を山に賭けて』

日本人で初めて8000メートル峰14座をこの5月に完登した竹内洋岳氏の帰国後インタビュー記事が「岳人」8月号に載っています。

日本人で初めて、と冠せられ偉業をたたえられている渦中にあるのですが、インタビュー記事はたんたんとしていて、「今までと違う特別な達成感は感じていません」。
たしかに「メートルでは8,000ですが、フィート、ヤードでは区切りが全然違ってくる。」

竹内さんは「プロ登山家」としてプロ宣言をされており、その意味するところは、登山で生きていくという覚悟を持つことだそうです。
登山に人生を賭けていた日本人たちが竹内さんの前にいたということを、今回の14座完登によって多くの人が知ってくれたことがすごく重要、とインタビューでも述べられていました。

登山で生きていく、冒険で生きていく、という覚悟。
 
日本社会では登山家や冒険家が受け入れられにくいと本田勝一氏が書いていたことを思い出しますが、その社会も変わってきているのでしょうか。

街の書店で手に入る冒険家への案内書―植村直己『青春を山に賭けて』(文春文庫 1977年)

好きな本としてあげさせてもらうのもなんだか当たり前過ぎて気が引けるのですが、ひとこと加えるのなら、登山などに全然興味もなく、会社でバリバリ働いている女性の友人に、面白いから読んでみて、とおそるおそる渡したところ、見事にはまって一気に読破した、といったことがありました。


屋久島チャリ一周

夏休みシーズに入って、屋久島への計画を考えている話を聞くようになりました。

「半日あいているんだけど、何かおススメは?」という声も時々あります。
半日・・・限られたスケジュールの中では貴重な半日だし、さがせば半日でのツアーや体験系は用意されているだろうな・・・でも島での半日は普段の時間感覚とは違ってくるもの。屋久島旅を楽しむなら、何よりその島時間に入り込むことがポイントだと思います。

ずいぶん前にチャリで島一周をしました。
周囲130キロの屋久島は、島とはいえ九州最高峰の宮之浦岳(1,936m)などの山岳を奥に抱えており、海沿いぐるりの道路もアップダウンのある道です。とくに西側の西部林道は山越えになるため、そこでは自転車は押して進むしかなく、必ず左回りで先に山越えをすること、時間の目安としてどこにも長居せず朝から夕方までかかること、といった事前情報を得て島の南側の平内集落から出発しました。




















思い出せば、西部林道のヤクザルたちが、完全にヒト無視でたむろしていたり、島のゴミ処理場が突然現れて、その山のようなゴミの異様光景に、これは忘れちゃいけないと思ったりと単に苦しい楽しいだけではない旅を得ました。

屋久島の旅としておススメ・・・でも真夏には無茶でしかないかも。





2012年7月9日月曜日

野尻抱影『日本の星 「星の方言集」』

カシオペヤ、オリオン、レグルス、プロキオン、アルデバラン、、、思い出せば星の名前は不思議にどんどん浮かんできます。その響きもすてきな星の名前も、ギリシャ・ローマの神話からきているわけで、そのことを少しも疑問に思わなかったのですが、昔から日本のその土地その土地で伝えられてきた星の和名を生涯かけて集めた人がいました。

野尻抱影『日本の星「星の方言集」』(中央公論文庫、1976年)底本は昭和32年

たとえばカシオペヤ座のWをいかり星(”イカリボッサン”)、スバル(プレヤデス星団)を羽子板星、ふたご座をゾウニボシ(旧正月の頃で雑煮が食べられる)と呼ぶなど、生活に結びついた呼び名がついている星の名前とその由来について、伝承や「85歳の物識りの老人を訪ねた手紙」などとして著者の元に集まってきます。

季節による時刻の変化や暴風雨の前兆の星など、漁師の目印になったものが多いように感じられます。日本のスター・ナビゲーションのことにも思いをはせました。









北斗七星



アラスカの州旗には北斗七星が描かれています。
南東アラスカのジュノーでは、さすがに州都なためか、合衆国旗とアラスカ州旗がひるがえっているのをよく目にします。
青地に北斗七星がくっきりしているのはなにかすがすがしい。

ところでオーロラのことはNorthern Lightsといいます。オーロラが実際に北からやってくるのをいつか見てみたいな、という思いをずっと持って来ました。

オーロラ・ノーザンライツ・北極光・・・アラスカ先住民にもそれぞれオーロラを表す語彙があると思うのですが、それをさがし求める旅もしてみたいです。